AI(人工知能)の未来
信頼でき、勤勉で賢い:新しいデジタルな友人
人工知能はより知的で人間的かつ予知的になりつつあります。では、意思決定を機械に引き渡す準備は?

2016年はキーボードを使用するだけでなく音声とジェスチャーを使用して、より直観的で人間的な方法でマシンとやりとりする「ピークキーボード」の年であったかもしれません。アマゾン社(Amazon)のエコー(Echo)や人工知能(AI)を搭載したグーグル社(Google)のホームスピーカーのようなデジタルアシスタントによって、私たちはインターネットとチャットできるようになります。
インターネットは情報を検索する際のページにアクセスするための単なる参照ツールにとどまらず、会話も可能になります。AIアシスタントは、ウェブページ上の営業時間の静的なスナップショットに私たちを導くのではなく、レストランが今日何時にオープンするかを教えてくれます。AIは「取引を成立させる」ことができます。列車のチケットを予約し、アマゾンの買物カゴに歯磨き粉を加えて会計し、自宅の照明をオンにして、車にどれくらいのガソリンが残っているかを教えてくれます。

デバイス内のAIも予知的になります。AIは、あなたがオフィスのエレベーターを離れたらウーバー(Uber)を予約してくれます。あなたの動きや指示からだけでなく、プラットフォーム上のすべてのユーザーの行動パターンから学ぶことができます。このように、AIは非常に迅速に学習できます。AIは、自分の過ちからだけでなく、人間とのインターフェースを取る他のすべての媒体の間違いからも学習していきます。
今後重要視されていくのは、私たちが所有しているデバイスではなく、車、オフィス、自宅のどこにいてもいろいろなスマートインターフェイスからアクセスできるAIアシスタントです。これは、いわゆるパーベイシブ・コンピューティングの始まりです。これらのデバイスは常に耳を澄ませていて、“常時オン”である必要があります。したがって私たちは、利便性とプライバシーを引き換えにすることの是非を問う必要があります。

私たちは、モバイル第一の世界からAI第一の世界へと移行しています。AIはサプライチェーンマネジメントから顧客行動、宇宙の起源まで、どんな問題が私たちに降りかかろうとも、電気やWiFiのように私たちが必需品としているものになっていきます。
「データの遍在化により、生身の有機的な脳が管理するにはデータ処理は膨大となるため、AIにかなりの権限を移譲していくことになるだろう」
データの遍在化により、生身の有機的な脳が管理するにはデータ処理があまりにも膨大となるため、AIにかなりの権限を委譲していくことになりそうです。ほぼ無限に知識が手に入ることにより、私たちは質問の仕方を根本的に再考しなくてはなりません。無限の知能に何を求めますか?これらの質問を考えていくことは貴重なスキルになっていきます。
私にとって、AIの本当の潜在的な可能性は、私たちがすでにやっていることを自動化するのではなく、私たちがまだ解決できないことにその知力を注ぐことにあります。私たちはパンデミック・マネジメントから気候変動、移住まで、非常に複雑な世界的課題に直面しています。人間は今まで自身を体系化することができなかったので、これらの問題に取り組むためにAIを設計すべきだと主張する人もいます。
AIは中立ではなく、プログラミングしている人々の偏見に根付いています。生死に関わるようなものを含め、私たちが意思決定のデジタル化に取り組む中で、倫理的、哲学的な多大な疑問が、今後数十年を定義していくことになるでしょう。